日程:2024年2月27日 曇
場所:伯耆大山山麓・大山寺近辺
先日のイグルー講習で簡単な弱層テスト・アバランチビーコン操作の練習をしたのですが、自分自身の知識のブラッシュアップを図りたいと思い、標記の講習に参加してきました。
なお、参加に当たっては、県連の講習会参加補助を受けています。
日本雪崩ネットワーク AvSAR基礎コース・雪崩講習
会場は伯耆大山山麓付近、雪山技術一般ではなく、雪崩捜索・救助技術に特化した講習で、
日本雪崩捜索救助協議会のマニュアルに準拠した内容になっています。
雪崩探索救助を英語にすればAvalanche Search and Rescue(略してAvSAR)で、日本雪崩捜索救助協議会は、組織的な捜索救助方法の標準化及び訓練コースを実施し、生存救出率を向上させるために設立された団体です。
当協議会には、日本雪崩ネットワークの他、労山や日山協、ガイド協会なども加盟しています。
講習人員は講師2名+アシスタント2名に受講生16名(報告者以外全員スキーヤー、滑走系)の構成で、ビーコンの特性の説明から始まり、捜索練習、掘り出し練習、チームによる捜索から救助までの流れを順に行っていきました。
ビーコンはますます増える電子機器や送電線、金属の構造物などの影響を受けるため、通常公称よりかなり短い30~40mの実用感度しか得られないこと、捜索時には発信側ビーコンの磁束線の向きに影響を受けることなど、実戦的な説明がなされます。
特に当たり前のようでいて十分意識しておかなければならないなと思ったのは、ビーコンを使用するのは事故者の救出が目的なのだから、画面ばかり見るのではなく何より周囲の状況をよく観察することが重要、という部分です。
一通りビーコン操作をした後、プローブによるピンポイントの位置確定とショベルによる掘り出しを行うのですが、ショベルを使う際は腰を入れて力を効率良く使うこと、壁をブロック状に切り崩すように掘り出すこと、後方要員は掘るというより後ろに掻き出すような意識で排雪を行うことなど、これまた実戦的な内容で、特にショベルの使い方に関してはイグルー作りとも通じる部分がありました。
また、ビーコンを携帯していない事故者の捜索は、ラインプロービングという複数人が一列に並んで人海戦術で行うプロービング法を用いるのですが、これが如何に労力のかかる非効率な方法であるかということも実感できました。
プローブは単純なアルミの棒ですが、現場で慌てているときちんとロックできておらず、雪に刺したところ分解してしまって抜けなくなるというアクシデントもあるようで、このような些細なことでも人の生死に関わりかねないということも、肝に銘じておかなければならないと思いました。
午後からはチームに分かれて想定埋没者を増やしながら捜索を行いましたが、持参したビーコンは複数埋没者を順に捜索するためのマーキング機能が無く(別の方法はありますが)、また受信モードに切り替えて2分経つと自動で送信モードに復帰してしまうため、積極的には参加できませんでした。
その場合でも、各自ができる範囲で役割を果たすことが重要なのですが、具体的に想定されている状況や前提条件が今ひとつピンと来ず、あまり適切な動きができなかったのは残念でした。
この講習では、偶然居合わせたメンバーが如何にうまく連携を取って統率の取れたチームとして動くか、ということが重視され、コミュニケーションの取り方というのが救出の一つの鍵になるように思われました。
ただ、それぞれのバックグラウンドやスキル、事故状況や埋没者の数、その状態、装備の違いなどを踏まえて十分チームワークを発揮できるようマネージメントを行うには、相当な経験と判断力が必要になりそうです。
僕自身もほとんどソロかそれに近い行動形態で、他の登山者に出会うこともあまり想定していない面もあり、必要になった場合の人との連携という部分では課題が残りました。
全体として、上述のビーコンの機能的制約や、この点を知りたいと思った部分については結局自分自身で練習してみるしかなさそうだったこともあり、個人的には最後までピントが合わなかった部分があったのですが、一番よかったのは、自分の動き方一つで事故者が救えるかどうかが左右されるということが実感でき、責任の重さを再認識できたことです。
そもそもこの講習に参加したのは、自分一人だけでは雪崩捜索練習を行うのが難しいからです。
険しいルートでなくても、条件次第ではどこで雪崩が起きるかわかりません。
みなさんも是非一緒に練習して万一のアクシデントに備えましょう。
報告は以上ですが、最後に、「捜索・救助も大事だが、そもそも雪崩る場所に入らないことが何より大切」という講師の言葉を添えておきたいと思います。