CSS・ビーコンテスト報告 

 

 2025年1月13日

 山の会オフトレイルTN、滋賀山友会SK・KHで、琵琶湖東岸の帰帆島でビーコンテストを行ってきました。

 

 ビーコンは詳しくはアバランチ(雪崩)ビーコンと言い、海外ではアバランチトランシーバーという呼称が一般的です。

今回のテストは、ビーコンの一般特性と各社ビーコンの操作性や癖を確認することが主な目的です。

集まったビーコンは、MAMMUT Barryvox、Barryvox2、ARVA Neo+、ORTOVOX、Zoom+、PIEPS DSP stdです。

いずれも3アンテナデジタルビーコンです。

PIEPS DSP stdはモデルとしては古いのと、Backcountry Access社の製品が無かったのが残念ですが、

まずまずバラエティに富んでいました。

 ビーコンは、長辺方向に沿って発信アンテナが内蔵されており、発信モード時は約1秒間隔で電波を発し、

末尾の図のような磁束線(フラックスライン、点線)を形成します。

受信側のビーコンには、磁束線の向きに沿った方向と距離が示されます。

テストは、まずビーコン1台を発信モードで平置きにし、他のビーコンは受信モードにし

て発信ビーコンの長辺の方向にまっすぐ近付き(末尾図のA方向)、表示が安定する距離

をチェックしました。

発信ビーコンZoom+、受信ビーコンBarryvox、Barryvox2、Neo+では、いずれも45m

程度で安定しました(顕著な金属物・電磁波発生機器は近接していないと思われます)。

発信ビーコンBarryvox2、受信ビーコンZoom+、Barryvox、Neo+では、Zoom+のみ

5m程短い40m程度で安定しました(他2機種は最初と同様)。

次に、ビーコン1台を発信モードで平置きにし、他のビーコンは受信モードにして発信

ビーコンの短辺の方向にまっすぐ近付き(末尾図のB方向)、上と同様に表示が安定する

距離をチェックしました。結果はいずれも、最初のテスト-5m程度で安定しました。

 その次に、ビーコン1台を発信モードで立てて(地面に垂直)置き、同様にテストすると、

安定位置は上の短辺置きとほとんど変わりませんでしたが、近付いていくと表示が不安定

になるゾーンがありました。

理由はわかりませんが、特に受信ビーコンの側面側に向かって近付いた時、暴れが大きく

なる傾向がありました。

その後、さらに広いグランドに場所を移し、古いDSP stdの点検も兼ねて、実際の捜索手

順に従ってシグナルサーチ→コースサーチ→ファインサーチ(クロスサーチ、同義ではあ

りませんが)を行ってみました。

DSP stdを発信モードにしてBarryvox、Barryvox2、Neo+、Zoom+で捜索しましたが、

いずれも正常に発見できました。

ただ、Zoom+は他に比べて若干方向インジケーターの安定が悪く時々急に違う方向を指

すことがありました。

Neo+を発信モードにした場合も同様でした。

いずれにしても、磁束線に乗ったと思われたら、インジケーターのみに頼るのではなく、

磁束線の収束方向を予想して進む必要があります。

DSP stdでの捜索に関しては、古いからか反応がワンテンポ遅く、使えないことはありま

せんが他に比べると使い勝手はやや落ちる印象でした。

また、途中まで距離表示がかなりずれていたので、校正が必要かもしれません。

その他、機種個別の癖として、クロスサーチの際、Barryvox2は目標物への接近時の反応

はリニアですが、目標物を行き過ぎてから戻る際の反応が遅く、数値がなかなか減少しな

い傾向にありました(意図的にそういう設計になっているかもしれません)。

この点、Neo+はどの方向に対しても反応が早く、クロスサーチでの使用感は素直でした。

また、これは仕様上の問題ですが、Zoom+は受信モードにしてから2分間で自動的に発信モードに復帰してしまい、

これを設定で解除することはできないので、捜索時に注意していないと混乱をきたします。

 最後に、複数埋没者の捜索をシミュレートしました。

それぞれの埋没者の距離は3m程度です。

捜索は古いNeo+、マーキング機能の無いZoom+以外で行いました。

いずれの場合も、2人までの捜索はマーキング機能が適切に働き、比較的スムーズに捜索

が行えましたが、3人となるとどの機種でも表示が混乱することが多く、操作する側にも

熟練が要求されるように思いました。

昨年受講したAvSARの基礎講習でも、割合の多い単独または2人までの埋没事故の救出

率を上げることがまず大切、と言われていたことからも、ひとまず2人までの捜索が確実

にできるのを目標に、トレーニングを行うのがよいだろうと思いました。

あまり厳密なテストとはなっていませんが、全体としてビーコンの動作特性を理解し、各

機種固有の動作や操作上の癖を把握するという当初の目的は、おおよそ果たせたか思いま

す。

今回は機材テストの意味合いが強かったので参加者募集はしませんでしたが、初級登山教

室で取り扱っていない雪山の基礎技術も今後CSSで取り上げていければと思います。

県連CSSで、金毘羅の岩場にマルチピッチ練習に行きました。

 

                            (N 山の会オフトレイル)